平成12年8月30日
火山泥流常襲地を確認
滝沢村一本木自衛隊演習地の地層をトレンチ調査
貞享噴火では2.8メートルにも



 研究者を中心とした岩手山火山灰トレンチ調査グループ(代表・土井宣夫地熱エンジニアリング主席技師長)は28日(8月)滝沢村の陸上自衛隊岩手山演習地内で実施したトレンチ調査の結果を発表した。
 岩手山の小堀沢流域で過去6000年間に形回の大規模な火山泥流や土石流の形跡があることが判明した。中でも防災マップで想定された1686年の貞享噴火では厚さ2.8メートルのたい積層が形成され、ここ数千年間で最大規模の噴火だったことが確認された。同沢の周辺は岩手山噴火の際には高い確率で泥流などに襲われる被害常襲地帯である可能性が高い。「周辺には泥流被害の常襲地帯が複数あるはず」と土井氏は話している。今後さらに地域の特定を進めたい考えでいる。

 調査は山頂から東へ4.5-6.0キロ離れた同村馬返しの登山口に向かう道路から東に約150メートル離れた同駐屯地演習場内の三ケ所を対象に行われた。この内の山頂から東方に約4.5キロ、小堀沢から10数メートルの位置に設定された第一トレンチから2.8メートルのたい積層が見つかった。

 トレンチの掘削幅と深さはともに7メートル。6000年前まで遡ると、厚さの異なる6層の火山泥流あるいは土石流による赤茶けた、堆積層が見つかった。過去2000年間に限ると5層となり、かなり高い頻度で火山泥流が発生していることが分かる。

 土井氏によると、トレンチ地点は沢から離れており、堆積物が地層として残るには、かなり大規模な泥流や土石流であったはずという。規模が比較的小さななどはさらに多く発生していた可能性がある。

 貞享噴火(1686年噴火)の堆積物は災害発生時、水を含んだ流動層だった。このため直後には2.8メートルの数倍の厚さで堆積していた可能性がある。

 泥流などは小堀沢を伝って下方に流れ、ふもとに行くにつれて扇状地のように広がっていく。それが砂込川に流れ込み、再度川伝いに一本木地区に到達、(家屋が)流出したと考えられるという。

 昨年と平成10年に演習場内で実施した地点、今回の残る二ケ所の調査を総合すると、小堀沢周辺は岩手山噴火で泥流などの被害が集中する常襲地帯ということになる。

 「噴火による堆積物の分布は分かっていたが、今回の調査で実態がだいぶ分かった。特定の地域で頻発して(泥流などの)影響がでているところがあり、何か災害が発生したときは必ず発生する場所と場所と考えた方がよい」と土井氏は説明している。

 「地形条件が類似した他の沢もあるはずで、そこを突き止める必要がある。ふもとで土砂が広がっていた場所をトレンチすれば、実態がさらに分かるはず」という。火砕サージを含めた現象の到達範囲の分布も特定したいと話している。

 岩手大学の教官らを中心に平成10年から開始。保存状態が良く、噴火による堆積物の特徴が分かりやすいとして自衛隊の協力を得て実施している。                   

「盛岡タイムス」平成12年8月30日



 岩手山 貞享噴火の記録

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