一、稗貫家之次第

天正十八年、奥州仕置きにより滅亡した一族

中納言藤原山陰十一代孫足立民部丞兼盛次男外嶋山城守信家武州足立に住す。嗣子なく実弟足立右衛門尉遠助男鈴木次郎廣家に家を譲る。仕頼朝公文治五年奥州征伐の軍功に依り稗貫郡の地頭職を賜ふより代々稗貫氏を称し、六代の孫稗貫兵部少輔貞廣南朝方新田の手に加る。其子太郎俊行北畠顕家卿に随ひ軍功あり。其三代孫大和守廣隆武勇隣郡を服せしむ。其五代目大和守家起初は孫太郎武重。天正三年三月卒。其男孫次郎家法又廣忠、実和賀氏二男ともいふ。性闇弱むにして諸臣へ愛なかりかし故、臣下不服。然に天正十八年秀吉公小田原征伐御下向、序に是まで参礼無之輩征伐として、秀次卿奥州に下向の趣聞ける故に、家法大に驚き、花巻十八ヶ崎城へ夜に乗じて稗貫川上山中に潜居して、翌十九年奉其処にて死。妻妾家離散して花巻空城となる。此時浅野長政下向、其由緒承り、其臣下浅野庄左衛門城代に入れ置ける。 　稗貫一族諸臣 稗貫靭負佐本隆　　　　家起叔父五郎入道子 瀬川五郎左衛門本矩　　本隆子　　　　浪人　仕政直君五十石 瀬川右京武信　　　　　家起弟廣武子　始山口氏浪人　仕松斎三百石瀬川久太郎武貞　　　　武信子 瀬川助左衛門本実　　　武信弟　　　　浪人　仕利直公百石 瀬川藤次郎敬健　　　　本実子 本舘甚四郎光起　　　　家起弟起晟子　浪人 本舘甚左衛門慶起　　　光起子　　　　農民　妹　重直公妾 亀ケ森能登喜明　　　　稗貫一族　　　浪人 　　　　　　　　　　　家法卒後其室を携て降参、此女美人、信直公妾となし喜明百石召出、山屋三右衛門と改む 山屋三右衛門家明　　　喜明子 山屋万左衛門辰明　　　家明子 瀬川下総守　　　　　　　　　　　　　浪人 瀬川出羽守　　　　　　　　　　　　　浪人 十二町目佐渡守助茂　　　　　　　　　旧臣 十二丁目下総守祐基　　佐渡子 伊藤小市郎助吉　　　　下総子　　　　仕利直公百石 伊藤丹後助宗　　　　　佐渡二男　　　度々一揆を起し、仕松斉拾石 十二丁目掃部助祐忠　　同流 十二丁目主水正祐隆　　祐忠子 十二丁目右衛門祐慶　　祐忠二男 十二丁目斎宮　　　　　祐隆子 伊藤新左衛門祐忠（並）十二丁目右衛門子　浪人 根子周防守高純　　　　　　　　　　　旧臣　度々一揆 根子備中守高充　　　　周防子　　　　同断 根子孫三郎高能　　　　同二男　　　　同断 根子大学吉康　　　　　　　　　　　　旧臣 根子兵庫助吉房　　　　大学子 根子与三郎吉就　　　　内蔵助子 根子右兵衛 根子主膳貞景　　　　　兵庫子 根子嘉右衛門貞行　　　吉房二男　　　仕政直君五十石 根子越後守高重　　　　備中二男　　　度々一揆を起す 根子忠五郎高成　　　　越後子　　　　一揆起討死 根子次郎右衛門高次　　越後二男　　　後年新田七十石 高橋備後守愛知　　　　　　　　　　　旧臣 高橋惣兵衛愛由　　　　備後子　　　　仕利直公百五十石 高橋四郎兵衛茂親　　　備後二男　　　仕松斎三十石 高橋駿河守盛重　　　　　　　　　　　旧臣 高橋与四郎盛時　　　　盛重子　　　　仕利直公百七十石 高橋庄太夫吉隆　　　　盛重二男　　　仕松斎二十二石 金矢丹後光栄　　　　　高橋氏　　　　仕松斎百石 亀ケ森能登守家朝 亀ケ森玄蕃家衡　　　　家朝子　　　　仕利直 亀ケ森兵助家祐　　　　玄蕃子改玄蕃　三十石　一本仕政直 小森林修理正達 小森林新左衛門正行　　修理子　　　　仕利直公百五十石 小森林与五右衛門正忠 小森林大隅守 小森林治部少輔 神山彦助吉次　　　　　根子次郎右衛門高次子 臺掃部助行光　　　　　高階氏　　　　浪人 臺弥十郎家光　　　　　行光子　　　　仕信直公二百石 臺四郎五郎顕光　　　　行光弟　　　　浪人 北湯口伊豆守光近 北湯口大膳亮光仲　　　伊豆子 北湯口弥太郎　　　　　大膳子　　　　一揆起し討死 北湯口安芸光茂　　　　伊豆二男　　　仕信直公五百石　島森氏と改む 北湯口主膳光房　　　　光茂男　　　　仕政直君三百石 島森権左衛門光里　　　光茂二男　　　仕松斎五十石 糠塚主計義相　　　　　仕信直公 糠塚次郎右衛門義音　　主計子 糠塚儀左衛門義但　　　次郎右衛門子 似内備中守高範 似内雅楽助高衛　　　　備中守子 似内隼人 似内但馬守敏房　　　　同流 似内式部且房　　　　　但馬守子 似内五郎　　　　　　　但馬弟　　　　一揆起し討死 似内平蔵　　　　　　　同弟右　　　　同死 照井兵衛入道鉄山 照井帯刀左衛門武也 照井助次郎武昌　　　　武也子　　　　仕政直君五十石 中嶋五兵衛冨秀 中嶋才兵衛冨尊　　　　五兵衛子　　　仕松斎百石 中嶋小十郎冨重　　　　才兵衛子 葛三郎左衛門家幹 葛茂右衛門家元　　　　三郎左衛門子 鈴木大炊助屋晴 鈴木逸宗屋滕　　　　　大炊子　　　　仕信直公百石 鈴木孫四郎儀仲 鈴木九十郎儀保　　　　孫四郎子 鈴木九蔵　　　　　　　孫四郎弟 寺林民部少輔 寺林将監宗次 寺林縫殿助宗忠　　　　将監子　　　　仕松斎 佐々木孫次郎高寛　　　似内雅楽二男 佐々木惣太郎為房　　　似内式部子 梅木助三郎政陳 三田権太夫廣行 小山田五郎左衛門宗治 小山田内膳宗隆　　　　五郎左衛門子　仕和賀　後仕政直君三十石 小山田越前守吉範　　　閉伊十郎孫　　小山田村住　仕志和稗貫 小山田越前守吉前　　　吉範子　　　　仕利直公三十五石 平賀五郎兵衛光則　　　根子支族 坂水右近義道　　　　　　　　　　　　仕松斎三十石 坂水又兵衛義顕　　　　右近子 八重畑美濃守 八重畑大隅守 八重畑獨歩斎 八重畑豊前守宗昭　　　家老 織笠九蔵宗能　　　　　豊前子織笠庄助猶子　七十石 大迫右近　　　　　　　大迫住人　　　志和九戸一味一揆起し人首死 大迫又三郎　　　　　　右近子　　　　和賀に加り死 大迫又左衛門　　　　　右近二男　　　和賀一揆に加り死 大迫十郎兵衛　　　　　右近弟　　　　仕松斎 新堀侍従北山斎 新堀作兵衛　　　　　　北山子　　　　志和一味　仕信直公 八反清水典膳 八反清水次郎左衛門　　典膳子　剛勇　一揆起し花巻城攻討死 岩田堂隠岐守廣邦 岩田堂七右衛門廣舎　　　　　　　　　仕信直公七百石 岩田堂源左衛門廣恒 轟木長左衛門敦久　　　元和賀臣　　　仕信直公七百石 轟木作兵衛　　　　　　長左衛門子 釜糠修理忠時 安俵五郎左衛門隆義　　忠明子　　　　仕利直公 高松監物 小船渡帯刀 小船渡三郎兵衛 小船渡小五郎　　　　　仕信直公五百石 八木澤左近 八木澤忠平 田中隠岐守 矢澤参河守　　　　　　旧臣鎌田氏 矢澤掃部 槻木主計助　　　　　　旧臣山内氏 槻木下野守 槻木孫太郎 幸田伊豫守 関口主膳正 関口彦四郎 櫻　安芸守 櫻　雅楽助 櫻　彦十郎 平綿土佐守 白石越後守 堂前彦太郎 二ケ村帯力俊隆 圓満寺兵庫 圓満寺土佐守 鍋倉大隅守 万丁目駿河守 松林寺将監 狼澤豊後守 湯本五郎左衛門 黒沼修理　　　　　　　　　　　　　　仕松斎 好地孫八 猪鼻弥十郎 嶋廻次郎左衛門 嶋廻五郎左衛門 　　　　　　　　　　　　　　　　　　奥南落穂集改題