一、和賀家之次第

天正十八年、奥州仕置きにより滅亡した一族

右大将源頼朝卿の長男千鶴丸と申は、母伊東次郎祐親が女頼朝卿密通の子なる故、祐親平家の聞得を恐れ由井浜にて殺害とし纐纈源六盛房密に隠し成長なす。頼朝公天下一統の時盛房其実を告るに、政子方の嫉妬を遠慮して奥州和賀郡の地頭職を賜り、式部大輔忠頼と改め建久二年下向、二子城に住す。室は刈田平左衛門尉時盛が女、源六盛房附下り八重樫氏と改め代々重臣たり。刈田氏子孫は小田嶋平澤両家なり。忠頼男中務大輔忠実二男羽州本堂郷に移り本堂式部大輔忠朝と称し、代々本堂郷を領知し和賀三代目中務大輔忠兼男子無女子一人あり。多田三郎義季の三男を婿養子と定め、四代目を継ぐ。和賀御所多田三郎宗忠五代、多田太郎宗義六代、多田三郎義維七代、和賀多田三郎義達南朝六、北畠顕家卿に従ひ功あり。八代目多田佐渡守義周、九代多田大和守義弼、十代多田大和守義篤、十一代多田中務大輔義翁、十二代多田薩摩守義弥、十三代目多田右衛門尉義春、十四代多田薩摩守義興、始は式部少輔義明といふ。天正八年卒す。十五代多田薩摩守義興、初は大和守光教実弟なり。天正十八年秀吉公小田原征伐下向、是迄参礼無之輩征伐の為の秀次卿奥州へ下向。最早福島迄下向たりと聞得けるによりて義興大に驚き本城を打棄て、出羽仙北田沢に潜居して其十月病死す。妻子諸臣諸所に離散す。十六代多田又次郎義忠父と同く遁逃せしが又々旧臣等を集め二子城に起兵し薩摩守と改名近郷を横行す。同十九年浅野長政蒲生氏郷下向、二子城を攻囲む。防戦術なく城に火して自殺す。其男又次郎義実滅亡の時没落して行衛を知らず。義忠又四郎義武、落城仙台に走り、伊達政宗に身を寄せ密に加勢を頼み、諸所一揆の頭人となり主馬助に改む。志和稗貫の残党を催し、度々花巻城を襲ひ田瀬土沢又は寺林辺へ一揆を起しけるに、慶長五年乱出来利直公最上加勢に出陣せり。折を見合せ起兵岩崎の古城に楯籠り日々徒党相持けるゆへ、利直公最上早々引上け岩崎に出陣ありけるに、雪深く合戦に利なく兵を収め、翌六年春出馬の処、和賀川水増し渡るべき便なき時、降参江釣子周防吉久先陣により諸軍競ひ攻戦ひ、寄手の内にも乙部長左衛門吉形、今渕半九郎政慶、岩清水蔵人義國討死。城方には岩崎弥右衛門義彦、同将監、小田島周防守、小原蔵人、筒井又十郎等、伊達加勢の士鈴木将監、仁井田内膳、志和浪人山王海太郎等討死し、舘城保ち難く城に火を掛け散々に遁逃せり。主馬助義武没落して仙台領松山に潜居す。此旨秀吉公（註:徳川家康ヵ）聞召て伊達政宗の心底御疑心有之により、政宗松山に於て主馬助を殺害して首を殿下に献しける。主馬助義武の男太郎幼弱にして民間に隠し、生長の上政宗に仕え、和賀主水義趣と號けて今仙台藩中に有之云々 和賀一族 本堂伊勢守親永　　　初代二男の家羽州本堂領主秀吉公より安堵書被下八千石一家をなして和 賀に党せず 和賀豊前入道月斎　　黒岩城和賀殿二男月斉盲人なり。其子孫仙台藩に扶持せらる。 煤孫下野守治義　　　八代義周二男上野介義秀六代孫。煤孫館始助三郎と度々一揆起す 煤孫修理助義甫　　　下野子　　　　仕松斉五十石 煤孫助三郎隆義　　　下野二男　　　一揆頭人 太田民部少輔義勝　　煤孫分　　　　沢内太田住　仕信直公八百石 太田縫殿助久義　　　義勝子　　　　仕利直公改五百石 太田小十郎義房　　　義勝二男　　　父分地三百石 猿橋五助義弘　　　　義勝三男　　　民間落三代目被召出 岩崎弥右衛門義房　　十二代中務少輔義翁四男　岩崎八郎義縄三代　岩崎城度々一揆頭人　 慶長六年落討死 岩崎弥十郎義高　　　義彦男　　　　仕伊達政宗七百石 岩崎弥左衛門義昌　　義彦二男六郎　仕利直公百石 岩崎将監　　　　　　　　　　　　　落城討死 岩崎弥八義邦　　　義彦三男 岩崎兵庫助 岩崎藤四郎 鬼柳伊賀守義邑　　　十二代中務大輔義翁五男　鬼柳伊賀守義幹の三代　鬼柳舘 鬼柳三郎兵衛義敦　　義邑男 鬼柳蔵人義元　　　　義邑二男　　　仕利直公百五十石　　　 鬼柳弥吉義景　　　　義邑三男　　　仕利直公十五石 鬼柳源四郎 毒沢民部少輔頼一　　十三代薩摩守義弥長男太郎義一男　毒沢舘 毒澤伊賀守一忠　　　頼一男 毒沢金作一邦　　　　頼一二男 和賀臣下 小田島雅楽助親光　　刈田平左衛門時盛の後胤　和賀家第一の長臣　平沢村住居 平澤右馬助親久　　　親光男　　　　仕政直君五十石 平澤隠岐親成　　　　親光弟　　　　浪人 小田嶋小次郎勝親　　親光弟　　　　浪人　飯豊村住 小田嶋右京親寛　　　隠岐男　　　　浪人 小田嶋治郎親治　　　小次郎子　　　浪人　矢沢村住 小田嶋主殿助親好　　一流 小田嶋周防守 小田嶋内記新邦　　　親好男 八重樫美濃守房重　　纐纈源六盛房後胤　初代以来代々長臣　義興の家老 八重樫掃部助　　　　義与家老 八重樫丹後守　　　　　　　　　　　一揆頭人 小原玄蕃峯行　　　　旧臣家臣 小原宮内安尹　　　　峯行子　　　　主馬義忠共走松山殉死 小原蔵人　　　　　　　　　　　　　落城討死 小原五郎左衛門峯興　峯行三男　　　仕政直君 高橋民部少輔吉資　　江釣子氏改む 江釣子周防吉久　　　民部子　　　　仕政直公百石 江釣子助五郎　　　　　　　　　　　仕松斎百石 江釣子彦右衛門吉遠　周防子 藤根五郎坊吉隆 藤根右近吉重　　　　五郎坊子　　　仕利直公百五十石 立花五郎左衛門勝登 立花主膳勝重　　　　五郎左衛門子　仕信直公六石 晴山蔵人慶知 晴山茂兵衛慶素　　　蔵人子 晴山隼人慶如　　　　茂兵衛子　　　仕利直公百石 鈴木内匠助茂良　　　気仙人　　　　仕利直公二百石 鈴木杢助茂照 長沼兵部景長　　　　　　　　　　　仕利直公二百石 長沼五郎左衛門景貞　兵部子 長沼平十郎貞刻　　　兵部二男 藤沢左衛門五郎忠清　　　　　　　　仕利直公百五十石 藤沢左衛門五郎為忠　忠清子 藤沢左内秀為　　　　忠清二男 轟木紀伊入道月斎 轟木兵庫助光尹　　　月斎子 轟木長左衛門敦久　　月斎二男　　　仕稗貫仕利直七百石 轟木作兵衛　　　　　長左衛門子 轟木源八郎　　　　　光尹子 安俵玄蕃　　　　　　稗貫士 安俵五郎左衛門 成田藤内 成田藤九郎　　　　　　　　　　　　一揆頭人討死 筒井内膳正　 筒井縫殿助　　　　　　　　　　　　一揆頭人 筒井又十郎　　　　　　　　　　　　岩崎討死 筒井喜助　　　　　　　　　　　　　主馬共走殉死 岩田堂隠岐守　　　　　　　　　　　稗貫士 岩田堂七右衛門　　　隠岐子　　　　仕利直公七百石 岩田堂源左衛門 斎藤九郎右衛門　　　　　　　　　　一揆頭人 斎藤十蔵　　　　　　　　　　　　　主馬共走殉死 佐藤孫市 梅沢伊豆守　更木村住 梅沢金作 更木主水正 只木下野守 只木五郎左衛門 只木五郎兵衛 昆土佐守　　　　　　　　　　　　　立花村住 都鳥兵部丞　 都鳥藤内 小鳥崎修理 欠上治部少輔利元　近江人 渕柳五郎左衛門 相去清三郎 千刈田刑部允 千刈田半太夫 願念隠岐守 願念讃岐守 仙人別当浄念坊 妙楽院 川原田伊勢守 川原田主計頭 川原田左衛門尉 蒲田宗現 稗貫浪人之より 根子周防守高純 根子備中守高充 根子孫三郎 根子内蔵助俊吉 根子弾正忠 根子越後守高重 根子忠三郎高成　　　　　　　　　　慶長五年花巻討死 櫻　雅楽助 矢澤掃部助 矢沢弥太郎 八重畑美濃守 八重畑刑部入道休信 八重畑又左衛門 八重畑又三郎 志和浪人之より 多田孫八郎綱俊 多田弥兵衛忠綱 山王海太郎　　　　　　　　　　　　岩崎城討死 小山田内膳宗隆 小山田孫八 大迫又左衛門 大迫又三郎　　　　　　　　　　　　右同断 大迫右近　　　　　　　　　　　　　度々一揆起人首村走死 遠野浪人左之通 阿曾沼四郎広縄 駒木内膳 平倉刑部 宇夫方八郎右衛門 白岩左衛門 畠山五郎八 金沢与五郎 細越与二郎 栃内善兵衛 伊達政宗加勢人名 白石右衛門尉宗玄 鈴木将濫重信　　　　　　　　　　　岩崎討死 猪狩伯耆守 仁井田内膳　　　　　　　　　　　　岩崎討死 母躰周防守 上郡山主水　　　　　　　　　　　　政宗加勢田瀬一揆加 藤田右兵衛尉　　　　　　　　　　　加政宗勢安俵一揆加 月舘右京 堀野弥三郎 奥南落穂集改題